世界のオイスターバーを訪ねて

マルト水産・顧問
山本紀久雄


世界中の海をまわって牡蠣養殖場の実態を見聞きし、主要都市でオイスターバーを訪ねる旅を続けている。
養殖されている海の中で食べる牡蠣は、その海そのもので、海水も温度もその時の天候もすべて異なるので、それぞれの海環境にしたがって味わいの濃さが異なる。一方、オイスターバーで牡蠣を食べ、ワインを口にし、その相性を舌で確認し、味わいを楽しむと、一定の温度基準値でコントロール管理されているので、牡蠣それぞれの味は異なるものの、食べ終わった後の感覚は一定のティストとなる。この全体的なティストづくりが、オイスターバーのブランドづくりではないだろうか。

以下に世界の主なる地域のオイスターバーを紹介する。

北 米

① ニューヨーク
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世界一のオイスターバーはニューヨークのグランド・セントラル・オイスターバーであって、グランド・セントラル駅にある。かの有名な元パンナムのビルで、列車の発着駅として1913年にできた建物。

この中に完成時から世界一のオイスターバーとして君臨し続け、ニューヨークでオイスターバーといえば当然にここを指し、他にもオイスターバーは数多くあるが、オイスターバーの代名詞として世界のトップに位置している。この店のメニュー、A3の大きさ用紙にビシッと並んでいる。数多くワインもリストされている。大体300種類はあるだろう。牡蠣ファンなら一度は訪問したいオイスターバーの聖地である。

② ボストン
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毎年シーフード・ショーが開催されるアメリカ・マサチューセッツ州ボストンは、魚が美味いと言われ、オイスターバーのレベルも高く、そのひとつWestin Hotel 1階のTurner Fisheries of Bostonへ訪問。入口に立つと、窓ガラス越しに街並みが見渡せ、インテリアとしてガラス使いが巧みである。

オイスターメニューは「オイスター フライト Oyster Flight」と書かれ訳すると「オイスター便」になるので、各地の養殖場から届いたという意味合いネーミングだが、さて、牡蠣の味わいはどうか。さすがにボストンのオイスターバーの牡蠣は知的な薫りが広がる美味さと納得。

③ カナダ・バンクーバー
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カナダ・バンクーバーのオイスターバー訪問は、最先端スポットとして人気が出ているイエールタウン界隈のRodney‘S Oyster House。カナダらしく全員がTシャツかラフとシャツスタイルでの応対。

店内は倉庫をそのまま使い、天上の柱が表れている。牡蠣は6種類。kussi、Gorge、Fanny Bay、Metcalf Bay、Malpeque、Mac‘S。メニューはなく、店内表示板に書かれている。いずれも美味いが、特にkussiとMalpequeは絶品。

南 米

① チリ・サンティアゴ

チリ牡蠣は小粒でチリ独特の牡蠣である。その産地のチエロ島に行くには、サンティアゴから約1000キロ南に下ったプエルト・モンPUERTO MONTTまで飛行機で1時間40分。そこからフェリーで南西へ55キロと遠い。

チリ牡蠣を食べようと、サンチャゴのオイスターバーに入る。専用の道具機械で牡蠣剥きを行っている。始めて見るものだ。台に道具機械が設置されている。見ていると蝶番から開けていく。一番厳しく締まっているところから開けるのだ。この店で食事するところは地下。一階の牡蠣剥きしている足もとの床に穴が空いていて、そこから下に降りる。急階段。物置の中に降りるという感じ。多分、昔は地下倉庫だったと思う。地下に降りる階段が物置用の簡単なもの。気をつけないと足を滑らして落ちてしまう。危険だが、これがサンティアゴのオイスターバーである。

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ヨーロッパ

① イギリス・ロンドン
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イギリス・ロンドンの著名オイスターバーGREEN‘S。1982年にオープンした伝統的な英国料理店でシンプルな素材味が売り物。ランチタイムには近くのビジネスマン、金融関係と画廊関係が多く、いわばニューマネーとオールドマネービジネス客で一杯になり、ディナーは近くのホテル宿泊のツーリストや金融関係商談ビジネスマンが多い。亡くなった皇太后や、アン皇女、先日亡くなったマーガレット・サッチャーも来て筆者の座った席にいつも座る。俳優ではキャサリン・ターナー、シェリー・テンプル。

ここの店長は、自ら牡蠣を開けてくれる。なかなかうまい。巧みに開ける。ロックは貝柱に近い横から。ネイティブは蝶番の方から開けて貝柱を切り取る。殻を開けたら反対側にする。見栄えをよくするためだ。内臓の方を裏側にしながら、会話も楽しい。ロンドンのオイスターバーはさすがに品格があると感じる。

② イタリア・マンフレドニア
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ローマから列車でフォッジャ乗り換え、南イタリアのマンフレドニアに入った。マンフレドニアには日本人がいない街である。ここで牡蠣養殖の実態を視察し、今日船にあげたヒラガキをレストランに持ち込み料理してもらう。テーブルに座ると、前菜にイカ、タコ、シラス。次に地元の白ワインMURGIAムルージアで生ヒラガキを食べるが、これが結構噛みしめた後味と合う。次にヒラガキをグラティナーレ料理、パン粉につけてオリーブ油、ニンニクとパセリをみじん切りにしてオーブンで焼く料理であるが、これも噛み具合がワインと楽しめる。

大量のヒラガキの生とグラティナーレを味わった後は、レモンのシャーベットである。これは魚を食べた後の定番とのこと。魚の後味を取り去って、次への肉料理に向かうためである。その次にコーヒーと食後酒、これはサクランボの自家製酒で、プーリアのサクランボ。これには思わずうまいと声が自然に出る。これでもうお腹はいっぱいであるが、普通はこれからパスタを食べるのだとの解説に、急に日本に帰りたくなる。イタリア人と生活すると、こんなにたくさん食べることになるのだ。これは大変だと正直に思うが、ここでも牡蠣はレストランの主役である。

③ フランス・パリ
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フランスは昔から世界中から憧れの的の国。その証明が8,300万人という世界一の観光客数。特にパリの街並みは、どこをとっても絵になり、ロマンが漂い、その街角には牡蠣が並んでいる。それも春夏秋冬、一年中生牡蠣が店頭に陳列されている。その事実を見た日本人は一応に驚く。パリジャンは一年中、生で牡蠣を楽しむ。日本とは大違いである。

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さらに、フランスの牡蠣は、ミシュラン三つ星の有名レストランから、ブラッセリー、街角での戸板販売まで、フランス人の日常食生活に深く入り込んでいるので、他都市のように特別にオイスターバーに行かなくても、常にどこでも楽しめる。これがフランスの最大特徴であるが、さらに、牡蠣はお祝い・パーティにも欠かせないアイテム。

大統領・首相官邸からレストラン、家庭での誕生日、友人来宅接待、Xmas、等、ちょっとした華やかパーティに必ず牡蠣が登場する。ということは当然に牡蠣を剥く職人、エカイエと称する人達の位置づけも高い。牡蠣剥き世界チャンピオンになると、ヨーロッパ各地で開催される著名パーティに招かれ、客の前で大量の牡蠣を、素早く、身を傷つけず、皿に美しく盛る技を披露する栄誉を担う。フランスに行き牡蠣を食する多様な場面を体験したいものだ。

オセアニア

オーストラリア・シドニー

シドニーでは、オーストラリア原産牡蠣のシドニーロックオイスターが人気。マガキに比べるとちょっと小ぶり。シドニーのオイスターバーは牡蠣をフイッシュマーケットから仕入れる。それもむき身にしてもらって届けてもらうシステム。ということはフイッシュマーケットが牡蠣剥きを専門的に行っていて、オイスターバーにエカイエがいないことを意味する。

オイスターバー兼シーフードレストランBLUE ANGELへ行く。移民国家らしく、この店はイタリア出身で二代目。ロブスターの専門水槽が12個もあって、「ここの水槽の数は世界一だ」と豪語するが、牡蠣の味わいもなかなかのもの。フイッシュマーケットからレストランには衛生管理法で決められている12℃ を保ち届くので安全。

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アジア

香港

世界の著名養殖場で輸出先を聞くと、大体において香港という。香港・九龍中心のネイザンロードから少し入ったレストランが立ち並ぶ一角の「Island Seafood & Oyster Bar」に入る。店内では生牡蠣が氷の上に並んでいる。週末は20種類以上、ウイークディーは15種類程度揃える。ここで印象に残ったのは、ウェイトレス応対。牡蠣の専門家だという風情、特に、ヒラガキを食べようとすると、それは味が混在して本来の魅力が分からなくなるから、マガキを食べ終わってからにしなさいと命令調のサゼッション。

そういう発言をするのであるから、相当の修業をしたのだろうと、この仕事についてどのくらいかと聞くと「6ヵ月です」には椅子から落ちそうになった。さすが香港女性は強気だ。

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