オイスターバーをたずねて

シンガポールのオイスターバー

山本紀久雄

ルークス・オイスターバー・アンド・チョップハウス

香港に行くことが決まってシンガポールにも寄ってみようと思ったのは、アジアの富裕層の華やかな生活を描いたハリウッド映画「クレイジー・リッチ!」を観たから。常識を超えた大金持ちの物語だが、不動産投資で財産を増やすなど、一般のシンガポール人が目指すサクセスストーリーの延長でもあるらしい。

ストーリーは、アジア系アメリカ人の大学教授レイチェルが同僚の恋人ニックの故郷であるシンガポールを訪れ、彼が不動産王の御曹司であることを知ることから始まる。映画は軽い調子のロマンチック・コメディー展開。資源のない小国ながら、独立から53年、1人当たり国内総生産(GDP)で日本を超す裕福な国となったシンガポールの富を映し出している。

「この家にはあなたが住めばいいわ。私はビルを14棟持っているからどうにでもなる」。映画では、ニックのいとこが離婚間際の夫にこう言い渡す。こんな世界は現実にあるのか。現地で確認すると「その通りの事例があった」との答え。

クレディ・スイスの2017年の調査では、シンガポールは成人1人当たりの資産額で世界9位、アジアでは首位。不動産や事業で財を成した大手財閥ばかりでなく、ニューリッチといわれる新興富裕層も増える。英不動産コンサルティングのナイトフランクが都市の高級住宅価格の過去1年の伸び率を比較した最新のランキングでは、シンガポールは中国・広州に次ぎ世界2位だった。

「世界最大級のバーキン収集家」がシンガポールにいるらしい。仏ブランド・エルメスの高級バッグ「バーキン」は入手しにくく高額なことで知られる。インドネシア人富豪との離婚を経て、化粧品会社を運営するこの女性の家には、エルメスのバッグだけで200個が並ぶという。

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富は中間層にも及んでいる。2018年7月初旬、都心から離れたマンション販売会場に、購入希望者が殺到した。政府が不動産市況の過熱を抑えるため、税率引き上げなどの投資規制を翌日施行すると発表したためだ。1戸1億円前後の物件が飛ぶように売れた。

「あすになれば印紙税が5万シンガポールドル(約400万円)高くなる。きょうしかない」――。あるシンガポール人男性は地元テレビに語った。国土が小さいシンガポールでは不動産信仰が根強い。家賃収入や転売による利益稼ぎを狙った不動産投資は幅広く浸透している。(日経新聞9月12日)

シンガポールに関して今年、最も話題となったのは6月12日の「米朝首脳会談」だろう。
ドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談の場所は、シンガポール南端のセントーサ島にある「カペラホテル」であった。

セントーサ島にはアジア大陸最南端ポイントがあり、その名の通りアジア大陸の中で最も南に位置する場所で、お洒落な吊り橋や、アジアチックな展望台、そしてそこから見える美しい景色を見ることができる。特に、展望台からは、天気が良ければ隣国インドネシアの諸島まで見え、反対側にはマーライオンタワーなども見え、抜群の景色を眺めることが出来る。このように話題となっているシンガポールのオイスターバーを訪れてみた。

「ルークス・オイスターバー・アンド・チョップハウス」のオーチャード店は、オーチャードロード沿いにあるロビンソンズ・オーチャードの3階にある。

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オーチャードロードは、19世紀まではこのあたりはナツメを栽培する果樹園があったことから、オーチャード(果樹園)という名がついたという。オーチャードロードで人気のデパートが高島屋、その真向いにロビンソンズがあり、ここの3階婦人服売り場、ハンガーに吊るした婦人服の陰に隠れるような左片隅にルークスの入り口が位置する。多分、ルークスに入ろうと思ってこない客には、気づかないほどで、「ひっそり」という表現があてはまり、まさに隠れ家といったイメージの入り口。

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エントランスの扉を開けると、デパートとは全く異なる落ち着いた空間となる。店内は黒を基調としたシックなインテリアでまとめられており、まさに大人のレストランという感じ。広すぎずちょうどよいスペースで、右側にカウンター席、左側にテーブル席が並ぶ。テーブル席は隣との間隔もあり、プライベート感が保たれている。
また店内正面に大きな窓があり、そこからオーチャード通りの輝く風景を見下ろすことができる。

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この日のルークスはほぼ満席。人気の店なのだろう。地元の人に加えて欧米人も多く坐っている向こう背景のカウンターには、本日のおすすめが表示されている。

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FEATUREと書かれた下に「DOVER SOLE ドーバー海峡のカレイ」、その下が牡蠣で上から「PLEASANT BAY」「MALPEQUE」「SAVAGE BLONDE」と3種類が表示されている。

一番上のPLEASANT BAYプレザントベイは、アメリカ・マサチューセッツ州の牡蠣。真ん中のMALPEQUEマルペクは見覚えがある。ボストンのTurner Fisheries of Bostonで食べたはず。2013年3月だったと思う。カナダだ。
一番下のSAVAGE BLONDEサベージブロンドは、カナダ・Prince Edward Islandの牡蠣。

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折角の機会なのでDOVER SOLEをオーダーし、牡蠣はアメリカのPLEASANT BAY を2個(写真左側)と、カナダのSAVAGE BLONDEを2個(写真右側)、4個を食べた。何れもマガキで、味わいはPLEASANT BAYが濃厚・肉厚。SAVAGE BLONDEは身が引き締まっている。いずれも美味く新鮮で、殻の内側はきれいな白色。

ワインはリースリングONYAREの2015年もの。ニューヨーク州で五大湖に面した地区にワイナリーが集まっているところだ。辛口で嫌味がなく、透き通っていると感じる。
最後に支払いとなってびっくりした。

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DOVER SOLEが97ドル、1ドル80円として7,760円。これが一番お高い。しかし、とても品がよい味わいだったので、金額通りと納得した。牡蠣は4個で32ドルだから2,560円、1個当たり640円。香港シティスーパーと同じくらいの価格だ。

ここルークスは、シンガポールで一番人気のオーチャードロード、その中でも高島屋の前だから人出が最も多い通りに面しているし、店内では蝶ネクタイ姿の支配人らしきダンディが、牡蠣とワインについて説明してくれる一流店だ。

一方、香港シティスーパーは、一人の中年女性がカウンター内にいるだけ。牡蠣剥きも、この女性が行う。
この環境条件を比較して考えると、ルークスの方が実質的に安いと思うが、シンガポールでは他のオイスターバーに行かなかったので、簡単には理由を語れない。

なお、シンガポールにも「珠せいろ」は進出しているだろう。今度は「珠せいろ」の評判も確認するためにも、時期を検討して行ってみたいと思っている。