新種のマガキ類を探す旅

第4回 香港におけるカキ類調査旅行記

小澤智生

2010年11月の始めに、キャサリン ラムさんと久々の連絡を取り、マガキ属の新種の産地を確認するための調査を可能なら11月中に行いたいので、ご都合の良い日を教えてくださいとメールを送った。

その返事には、香港特別行政区政府から業務委託されている定期水質調査が19日(金曜日)にあり、その日は香港島の定点観測地で自動記録されている記録紙の交換と採水を行うので、この機会に来ていただければ、会社のスタッフが調査に協力できるので、ご都合を知らせてくださいと書かれていた。幸い、19日前後は中間試験のレポート提出期間であったので、19日にお願いしますと返信した。勤務先には、18日より21日まで研究費で香港へ調査旅行に行く出張申請を提出し了承された。

18日(木曜日) 午後中部国際空港を発ち、夕刻香港空港に着き、8時過ぎに九龍のホテルにチェックインをした。キャサリン ラムさんと夕食をする約束になっていたので、すぐに着替えをして1階のロビーで待っていると。ラムさんが現れた。本当に久しぶりの再会である。

ラムさんが通リに面した小さな店であるがいつも人垣ができている有名な牡蠣飯の店があるのでそこで食事をしないかというので、是非連れて行ってくださいと同意した。香港の夜は長い、午後8時過ぎでも、これから夕食をしようという勤務帰りのグループや家族連れで飲食街はにぎわっていた。

車道から1段高くなった歩道に2つの小さなテーブルが置いてありそこで食事をしている人を取り巻くように人垣ができている店があったので、その店がこれから行く店だとすぐに分かった。この店の看板メニューは、岩場に付いている天然のイワガキ類を使った炊き込みご飯でアルミ製の蓋つき小鍋で炊きあがったばかりの熱々の牡蠣飯を一人一人に出してくれる。食してみると濃厚なイワガキの味がご飯に移り、牡蠣自身とご飯からのうま味が口いっぱいに広がり実に美味しいものであった。

夕食後、喫茶店に入り、明日の行程を打ち合わせた。ラムさんの勤務するOceanway Corporation Ltd. は九龍の北西にあるサイクン(西貢) にある。ラムさん等が立てた計画は、明朝、9時に社長のポール ホジソンさん、社員が乗った社用車で会社を出発、途中でラムさんをピックアップし、9時30分頃、九龍の私のホテルに立ち寄り、香港島に渡って南岸のタイタム湾(大漂湾 およびレパルス湾(浅水湾)の調査定点で水質検査用の採水、潮位計、風位・風速計の記録紙交換と、牡蠣類の調査を行い、午後3時ころサイクン(西貢)の会社に戻る。

その後、夕食、仮眠をとった後、深夜12時過ぎに会社を発ち、新界のディープベイ(后海湾)の岩礁海岸に固着しているマガキ属の未同定種を最大干潮時に採集し、今回の共同牡蠣調査を終えるというものであった。

  20日(金曜日)ホテルで朝食をとり、調査の身支度をしてホテルのロビーで持っていると、予定していた時間に、ラムさん、社長のホジソンさん、社員のチェンさんが現れた。初対面のホジソンさん、チェンさんに自己紹介をして、駐車していた大きなボックスカーに乗り込んだ。

車の後部には水質調査用の機器や採水用ボトルなどガ入っている塩ビの蓋つきトレー2個、潜水具、空気ボンベなどが積まれている。運転手の助手席にはプロダイバーの資格を持つチェンさんが、後部座席の1人席にラムさん、2人席にはホジソンさんと私が座った。

ホジソンさんによると、彼はオーストラリア人で、シドニー大学の電気工学研究科修士課程を修了後、中国の大学の工学部で教鞭を取った後、香港大学海洋生物研究センターの客員研究員、香港城市大学の海下湾海洋実験室の客員研究員とし専門の電気工学の知識を生かし遠隔操作による自動海底撮影装置など海洋調査の機器開発を行ってきたが、その後、独立し、現在の会社を立ち上げたという。

ラムさんとは彼女が香港大学海洋生物研究センターの大学院生であった時以来の付き合いで、彼女の香港城市大学海下湾海洋実験室の教員ポストの契約期限が切れたのを機会に、自分の会社に招いたのだという。
我々を乗せた車は香港島に渡り、南下し大漂湾に面する海岸通りに到着した。

私、ラムさん、ホジソンさんはここで車を降り、牡蠣類の調査を行ない、チェンさんは車で隣の浅水湾の水質等の定点観測施設に行き採水、水深に伴う水温測定、潮位などの連続観測装置の記録テープの交換作業を行う事となった。

下車したこの地点はラムさんが以前私に送った分析用軟組織サンプルを採集したところだと言う。持参したメモには、この湾のサンプルから得られたDNA塩基配列データに基づいて確認された種はマガキ属ではポルトガルガキ、これまで配列が知られていない新種と思われる種、オハグロガキ属の1種で、ベトナムなどで確認されている未記載種となっている。
早速、小さな波戸のコンクレートや石垣、岸辺に散乱する大小の岩塊、円礫上に固着している牡蠣類を多数採集した(図1)。


図1.礫上に固着したマガキ属およびオハグロガキ属の牡蠣

ヒズメガキに似たオハグロガキ属の種が優占種で、この種に交じりマガキ属のポルトガルガキと種名が明らかに出来ないもう1種が確認された。マガキ属で種名が形態から明らかに出来ないが種が探し求めていた種の可能性が浮上したのでこの種のサンプルを丁寧にキッチンペーパーに包み持ち帰ることとした。

しかし、誰でも訪れることのできるこんな身近な場所から本当にマガキ属の未記載が発見されたのかという疑問も浮かんできた。ラムさんは、問題の種はこの地点の潮下帯の深度の深い海底から採集された可能性もあると言う。

定点観測店での採水作業などを終えてチェンさんを乗せた車が戻ってきたので、昼食を取るため車に乗って赤柱(Stanley)のレストランに向かった。赤柱は香港島の観光地の1つで美しい海の風景が展望できるホテルやレストラン、多くの土産店があり、観光客で賑わっていた。

エビシュウマイが美味しい中華レストランがあると言うのでそのレストランに入り昼食を取り、食後、海岸を散策した後、午前中チェンさんらが作業を行っていた浅水湾に行き、ダイビングによる牡蠣類採集を行った。プロのダイバー資格を持つチェンさんが水深5~6mの海底の礫上に固着している牡蠣を岸辺に運び上げ、私たちは、岩石に固着している牡蠣殻をドライバーとハンマーを使い剥がした。大部分は、老成し殻が肥厚したポルトガルガキと思われたが、DNAの塩基配列を決定し種を同定するため、保存のよい5個体を持ち帰ることとした。

本日に予定した作業はすべて終了したので、東区海底隧道を使い九龍に出て西貢公路を北上し西貢の会社に戻った。3時を過ぎていたので、会社の事務所でコーヒーを飲み小休止をした。チェンさんは本日採水した海水試料を保冷庫にいれ、回収した記録紙をファイルに入れ帰宅していった。

ホジソンさんが会社の建物内を案内し会社の業務内容を説明してくれた。自社でまた研究機関と共同で開発した様々な海洋調査機器があり、これらは海洋調査の依頼を受けた際に使用するという。主たる業務は、特別行政府から業務委託されている香港沿岸の水質のモニタリングであるという。

この会社では、社主のホジソンさん、ラムさん、他に社員2名が、ダイビングのインストラクター資格を持っているので、ダイビングスクールも開いている。また、香港市の教育委員会からの依頼で学童に対する海の生物とその生態についての野外学習指導;国際的には西マレーシアのサバ州で現地の自然保護団体と共同で、マングローブの体験教室を開いている。できたら日本からも参加者を募りたいとのこと。

時計を見ると午後4時半過ぎになっていた。ホジソンさんが今晩の夕食の食材を買いに西貢海鮮市場に行くので、一緒に行って食材を選んで欲しいと言うので、ホジソンさんの自家用車に乗って市場に出かけた。西貢海鮮市場には多くの大型のエアレーションガされている生け簀に魚介類が入れられており、好きな魚介類を選び食堂で料理してもらうことができるので、週末や休日には多くの香港市民が海鮮料理を楽しみに訪れる場所である。

3人で話し合い、スープ用に大型のガザミ2匹、蒸し物用に中型の台湾ハマグリ10個、クルマエビ20匹、メインディシュ用の大振りのカサゴ2匹を購入、野菜や酢橘などを買ってホジソンさんの自宅に向かった。自宅は会社の近くの山の斜面にある。駐車場のある道路脇のゲートを入りブーゲンビリヤ、ハイビスカス、カンナなどが植栽されている急なスロープを上がっていくと玄関にたどり着いた。

玄関でホジソンさんの香港人の奥さん、中学生の息子、5歳の娘さんが出迎えてくれた。ラムさんは奥さんとも友人でこの家では家族同然であるように思われた。ラムさんと子供2人が黒い愛犬を連れて庭で遊んでいる間に、奥さんとホジソンさんがキッチンで夕食を作り始めた。

2人は日本食が大好きで、日本の調味料も常備し、時々日本スタイルの料理も作ると言う。食材選びでは私の意見を取り入れたので、是非手伝ってほしいと言われたので夕食作りに参加した。3人の合作料理は、ぶつ切りのガザミで出汁を取った味噌汁、ハマグリのワイン蒸し+酢橘、クルマエビの天ぷら+天つゆ、カサゴの蒸し物に赤唐辛子を漬け込んだ酢醤油をかけ、その上に細切りの白ねぎ、香草を乗せたもの、カサゴのから揚げの上に炒めた野菜を乗せ、上から甘酢のとろみをかけたもの、+白飯となった。

全員が居間に集まり、ビールとジュースで乾杯し、楽しい夕餉が始まった。和と中華の長所を取りいれた美味しい料理を堪能しているうちにすべての料理は完食となった。食後のデザートの果物を食べながら、日本の文化や食べ物の話になった。ホジソンさん夫妻、ラムさんも大の日本ファンで日本旅行での経験を楽しそうに話す。ラムさんは妹とすでに3度日本旅行をしている。日本の田舎を旅するのが好きだと言う。

今度は日本で会おうと言うことで楽しい夕餉はお開きとなった。予定通リ、これから仮眠し、12時に牡蠣の調査に出発することとした。ラムさんはホジソンさんの家で休み、私は会社の事務所の2階にあるソファーベッドで休むこととした。奥さんとお子さんたちには今回もう会えないので自宅へ招待してくれたお礼とお別れの挨拶をし、ホジソンさんと事務所へ向かった。事務所で私が休むソファーベットをセットした後、ホジソンさんは事務所の裏口のドアのカギを閉め自宅に戻って行った。

事務所の1階から声がして、電灯がついていることに気が付き、一階に降りていくと、ラムさんがコーヒーメーカーで落としたコーヒーをホジソンさんのカップに注いでいるところだった。コーヒーを飲みながら、地図で后海湾(深圳湾)の調査地点白泥(Pak Nai)へ行くルートを確認した。事務所の外に出ると、外気はかなり冷え込んでいることが分かったのでジャンパーをはおった。

ホジソンさんが社用車を運転し現地を目指した。真夜中とはいえ人口密集地の香港では高速道路沿いに高層住宅の明かりなどが次々と現れる。40分ほどして元朗への高速道路の出口があり、料金所で料金を払い市内の道路に入り、15分ほど走ると流浮山方面という道標があり、電灯が殆んど無い山道を注意しながら進んでいくと右前方に牡蠣漁村として有名な流浮山の明かりが見えてきた。

集落に行く手前で道路を左折し南下して行くとやがて深圳湾公路大橋の点灯する光がどんよりと曇った空の中に見えてきた、橋脚の下を通過してしばらくすると前方に白泥の集落の民家の小さな明かりが見えてきた。道路は2台の車が同時に通過できないほど狭かったので駐車が出来るスペースを探していると雨粒が落ちてきた。集落のはずれに安全に駐車できる場所を見つけ駐車した。雨は強まり本降りになってきた。

レインコートにヘッドライトを付け、採集道具、カメラ、筆記具をリュックに入れ、海岸に降りられる場所を探すために歩いていくと、集落の近くに海岸に通じる急な坂があった。海に降りてライトで照らすと、干潮で現われた堆積岩よりなる岩石海岸が広がっていた。岸よりの岩に近づいて観察すると殻長が5~6㎝くらいのマガキ属の牡蠣がびっしりと付いている。(図2)


図2.海岸の基盤の岩石上に固着したマガキ属

切り立った岩石の表面に固着している個体は左殻がカップ状になった形状(cupped oyster)をとっている。
殻の色は緑がかった白色で殻の縁辺部は薄紫をしている。これまでマガキ類でこのような殻色を持った種類を見たことがなかったので、もしかしてこれが探していたマガキではないかと心をときめかした。

形のよさそうな個体を必死になって岩から剥がしかなりの数の個体が得られたころ、道路上にいる2人から突然サーチライトを照らされ、上に上がってこいという手招きがありとても驚いた。作業をやめて道路に上がっていくと、夜間パトロール中の警察官であった。腰のベルトには大きなピストルが下げられ手には金属製のこん棒が握られている。まず身分証明書の提示を求められた。

ホジソンさんとラムさんは香港区政府発行の個人ID,顔写真付き身分証名書、私は、パスポートと勤務先から発行された身分証明書を提示した。警察官が、身分証明書を書き記したのち、ホジソンさんが名刺を渡し、香港特別区環境部から香港沿岸の環境モニタリングを委託されている会社の社長であり、ラムさんは社員、私は、香港の牡蠣類調査の共同研究者で日本の大学に勤務していると説明してくれた。

採集した牡蠣を彼らに見せた。彼らはホジソンさんの会社については知っていると言って、お互い和やかな雰囲気になった。 警察官の話によると、后海湾(深圳湾)を挟んで中国側と最短の距離にある香港側の白泥付近の沿岸には深夜、中国の対岸から麻薬を含むさまざまな物品や人が小ボートによって違法に持ち込まれ、それを受け取るグループがおり、夜間に密輸。

違法入国を取り締まるためのパトロールをしているところであったと言う。中国と国境を接する香港の厳しい現況を思い知らされた。 私たちは調査を終了し引き返すこととした。 最初に、九龍の私のホテルに立ち寄り私を降ろすため、北上し元来た元朗で高速道路3号線を南下した、ホテルに着いた時には4時を過ぎていた、今回、2人に会えるのはこれが最後だったので、今回の採集旅行の計画を立てていただき、貴重な時間をさいていただいたことに心から感謝の意を伝え、帰国後、結果の報告をする約束をして、また会いましょうと別れの挨拶を交わした。車は西貢をめざしパーキングエリアを離れていった。 
 
ホテルで目を覚ますとすでに昼の12時を過ぎていた。本日(11月20日、土曜日)は、吐露湾(Tolo Harbour)に面する烏渓沙(Wu Kai Sha)に行って、以前、学生との調査でマガキ属未定種とした牡蠣がどの種であるかを確認することを予定に組んでいた。

ホテルの食堂で昼食を取った後、タクシーで東鉄線の始発駅九龍のホンハム駅に向かった。始発駅を発ち東鉄線タイ ワイ駅で西鉄線に乗り換え、しばらくすると左前方に、穏やかな吐露湾の海面が見え、車窓から海を眺めているうちに終点の烏渓沙駅に着いた。駅の南出口を出て10分ほど歩くと目的地の帝琴湾(Symphony Bay)が見えてきた。この内湾には小川が流れ込み、細かい砂泥からなる遠浅の浜辺が広がっている。

小川の流路に沿った砂泥上にはウミニナ類が多く見られ、沖に向かって歩いて行くと小石や貝殻に左殻の一部を固着した単独の牡蠣、また2~3個体からなる牡蠣の塊が干潟に点在していた。(図3)


図3.烏渓沙の干潮時の干潟風景(写真中央部の礫にはミナミマガキが固着している。)

10個体ほどを集め、浜辺に戻って観察を行った。右殻上を黄褐色の薄い殻皮が重なって覆っている。殻を開けて閉殻筋痕の位置と色を調べると、後腹縁の近くに黒紫色~漆黒の大きな筋痕が認められた。これらの特徴はフィリピンに広く分布し養殖されているミナミマガキの特徴に合致する。

ミナミマガキが香港にも分布することが確認された。証拠品として形の整った3個体の貝殻を持ち帰えることとした。ホテルに戻り、バスタブにお湯を張り、ゆったりと体を沈め2日間の旅の疲れを癒した。疲れていたので、ホテルで夕食をすませ、早めに就寝した。

11月21日(日曜日)今回の旅行の最終日となった。朝早く朝食をすませ、部屋に戻って、機内に持ち込むリュックを背負い、スーツケースをフロントに運びチェックアウトをした。ホテルから呼んでもらったタクシーでエアポート エクスプレスの九龍駅に行き、エアポート エクスプレスに乗り、ターミナルの空港駅の手前の東涌駅で下車した。駅前のバスターミナルにある荷物預かり所にスーツケースを預けた。

今回の最後の調査として、以前の調査で興味深いマガキ属の種を確認していた大嶼山(ランタウ島)南海岸の水口湾に行き種名を決定するための標本採集を行った。

香港国際空港を午後2時の飛行機で発つので、11時半までに東涌駅に戻れば間に合う。
水口(シューハウ)湾にはバス路線東涌道線に乗ってランタウ島南海岸の塘福(Tong Fuk)で下車し徒歩10分ほどで到達できる。バスの時刻表を調べると、次初のバスに乗れば、現地で採集に十分時間をかけても11時半までには戻ってこられることが分かった。

塘福までの往復バスチケットを購入し出発した。ランタウ島には広大な自然保護区・海洋保護区が設定されており、週末や休日には多くの香港市民が行楽に出かける場所である。日曜日とあってバスは満席であった。大嶼山(ランタウ島)の山地を縦断し南海岸の道路を西進すると、塘福のバス停が見えてきた。

英語で水口(シューハウ)に行くのは塘福で降りればいいですねと臨席の人たちに確認すると、塘福の次のバス停キャンプ場前で下車したら水口は目の前であると言われた。キャンプ場前で下車し海に出る道をしばらく歩くと水口の浜辺に出た。以前調査したときの野帳を開き、マガキ属の種を確認した地点を目指した。

水口湾には遠浅の美しい砂浜が見られ、その中ほどに砂浜をえぐって海に流れ込む小さな水路がある。以前の採集地点はこの水路が海に流れ込んだ地点の沖合の砂底である。

海は干潮に向かっているが干潟をまだ海水が覆っていたので海水パンツに着替え、遠浅の砂浜を沖に向かって歩いて行った。まだ海水が退かない細砂底の上に点々と小さな球形の牡蠣が見られた。(図4)


図4.礫や巻貝の死骸上に固着したマガキ属の種が見られた水口湾の干潟

牡蠣を取り上げて観察すると、ウミニナ類などの巻貝の死殻や生き貝に、また離弁した二枚貝の殻に固着してカップ状に成長をとげた”cupped oyster” であることが分かった. この牡蠣の死殻をみると縁刻歯がないのでマガキ属の種であることはわかるが、これだけの情報では種を決定できないので貝殻標本を持ち帰って調べることにした。

浜辺に戻り、着替えをした後、バス停に戻った。自販機で缶コーヒーを買い、ベンチに座ってコーヒーを飲みながら、今回も無事調査旅行を終了できたことへの感謝と達成感を味わった。

今回の調査中に採集したマガキ属の新種の可能性がある貝殻標本と、これまでDNA塩基配列を決定し種名が判明している貝殻標本と重要な殻形質を比較検討した結果、香港島の赤柱の波戸のコンクレートや石垣、岸辺に散乱する大小の岩塊、円礫上に固着していたマガキ属の未定種、また大嶼山(ランタウ島)南海岸の水口湾で採集したマガキ属のカップ状をした未定種はともに、全く予期もしていなかったシカメアガキ(Crassostrea shikamea)であることが判明した。

また、后海湾(深圳湾)の白泥で夜間に採集したマガキ属の種はホンコンガキ(Crassostrea hongkongensis)が岩石の斜面に固着した生態型、cupped oyster であることが明らかになった。